準備編(1/2)

 一発録り形式の場合、効果音のタイミングを聞きながら役者が演技をすることができ、制作期間も短時間で済むなどのメリットがあります。しかし、役者のNGだけでなく、違った効果音が出てしまったなどの効果音NGも多発する危険性が高く、技術的慣れや効果音再生者などの人海戦術がなければ異常に録音時間を費やしてしまうデメリットもあります。
 さて、録音下準備ですが、まず最低限以下の機材を揃えて下さい。

1:ミキサー
 ミキサーは小型のもので結構です。最近ではDTM(DeskTop Music)用に小型で安く簡単なミキサーが楽器店で販売されています。思い切って購入しても良いかも知れません。通常2〜3万円、安いものだと1万円ぐらいで購入できます。

写真左のものは、小型軽量のミキサーで、乾電池(四角いやつ)でも稼働する便利ものです。1、2チャンネルがマイク入力対応になっており、3、4チャンネルがそれぞれステレオ入力できることから、ちょっとしたおでかけレコーディングなんかには便利です。

写真右のミキサーは、コンセントに電源を求める必要がありますが、割と軽くメーターがVUメーターなので人の声を調節するには分かりやすい便利ものです。大きい分入力も多く、1、2チャンネルがモノラルでレコードプレーヤーを接続でき、3〜6チャンネルがそれぞれステレオ入力できるといったものです。さらに、各チャンネルはマイク入力に対応しております。これらのほかにもいろいろでまわっておりますので、実際に店頭でさわってみて確かめることをお薦めします。

 ただし、購入時には次のことだけは注意してください。

 a:マイクが接続できるか
 b:カセットやMD、CDなどの機器が接続できるか
 c:入力レベル変更ボリュームが動かしやすいか

 ミキサーによってはカセットやMD、CDっといった機器だけしか接続できないようなものもあります。当然のことながら人の声を録音するためにはマイクを使わなくてはなりません。ですから、必ずマイクが接続できるかどうかをお店の人に確かめて下さい。このように、マイクが接続できず、カセットやMD、CDなどの機器だけを接続できるミキサーを俗に「ラインミキサー」あるいは「キーボードミキサー」と言うことがあります。「マイクも接続したいので、ラインミキサーじゃ困る」などと言えば、お店の人も対応したモノを紹介してくれるでしょう。

 これとは逆に、マイクしか接続できないミキサーもあります。実は、マイクの信号のレベルはカセットやMDで使用している信号のレベルと異なっています。このため、マイクしか接続できないミキサーに無理矢理カセットやMDを接続しても音が鳴らないということがおこるわけです。この点もお店の人に確認しましょう。

 最後の、「入力レベル変更ボリューム」ですが、あなどってはいけません。一発録りの場合、頻繁なボリューム調整が必要になります。例えば、役者のささやき声から叫び声への変化、効果音のレベルで近くにあるもの遠くにあるもの環境の音などなどなど。この際に、変更するボリュームが使いにくくては話になりません。小型で安価なミキサーでは、大抵このボリュームがつまみ式(つまみでグニグニ回すもの)ですが、お薦めはスライダー式(直線的に動かし調整する、俗にフェーダーと呼ばれるタイプのもの)のものを探すと良いでしょう。写真のミキサーはともにフェーダー式です。

2:マイク(マイクスタンド付き)
 マイクはカラオケ用などといって売っているものでもよいと思います。最近では、リバーブ内蔵などといったものもあるので、便利かも知れません。ただし、カラオケ用の安価なマイクではケーブルがノイズを拾ってしまうという問題もあり得ますので注意して下さい。ちょっち高めのもので、カラオケ屋にあるような高級そうなマイクでも、1、2万円で購入できます。

 他に、マイクを固定するためのマイクスタンドもあると便利です。特に1本のマイクを複数で使う場合は自由に高さの変えられるスタンドを用意しましょう。楽器屋さんで購入できます。安いもので1万円前後です。「人間の手でもってじっとしていればいいじゃないか・・・」っと思われるかもしれませんが、これが以外とノイズを発生させてしまいます。できればマイクとセットで使用するようにしましょう。

 ちなみに、写真は、シュアーのボーカルマイク(安物で1万円前後で購入できる)で、マイクスタンドは小型持ち運び可能な卓上マイクスタンド(8000円ぐらいだったと思う)です。

3:録音用機材
 通常のポータブルMDとかで十分だと思います。録音するシーンごとにIDをつければあとでNG部分を抜かして再生するといったことも可能です。カセット・テープで録音してもいいのですが、NGが出たときに失敗した所から重ねて録音しなおすといったことができないため不便に感じるかも知れません。さらに、ダビングすると音質が悪くなるのと、保存に向かないというデメリットもあります。最も高音質で残したいというのでしたら、DATがおすすめですが、民生品としてはなかなか売れていないため、機器も高めです。

 写真左はソニーのポータブルMD。かなり旧式のものです。MDは多少音質が変化してしまいますが、結構便利です。写真右はソニーのポータブルDAT。これもかなり旧式です。DATは音質がよいのはうれしいのですが、割と壊れやすいのが難点です。最近では、サンプリングレートが44.1kHzで生録できる機種も出たので、CD制作のマスターとして活用するには便利でしょう。

4:効果音再生用機材
 MDがお薦めです。一時停止の状態からすぐに効果音を再生できる点と、すぐに次の効果音に移動できるのが最大のメリットです。(3の写真左、ソニーのポータブルMDを参照)

5:各種接続用ケーブル
 ケーブルには色々な種類があります。使用する機材によって接続できるケーブルが異なってきますので必ず確認してから買うようにしましょう。ただし、多少の間違えは変換プラグなどで対処できるので、恐れることはありません。

 写真はちょっち見にくいですが、左からフォーンプラグのモノラル(標準プラグとも言われる)、フォーンプラグのステレオ(標準ステレオプラグとも言われる)、ミニフォーンプラグのステレオ(ウォークマンなどのヘッドフォン端子によく使われている大きさ)、RCAプラグ(ステレオを接続するときや、ビデオを接続する時に多く使われているもの。赤が右音声、白が左音声、黄がビデオと分けられている)、XLR(キャノンとも言われる。プロ使用はほとんどこれ。接点が3つあり、プラス、マイナス、グランドとわかれている)のメスとオス(へっこんで穴が空いている方がメス。出っ張っているほうがオス)。

 さらに、上にいって、左からRCAプラグのメス−メスプラグ(RCAのオスプラグのケーブルを接続延長するために使用)、モノ標準メス-RCAオス変換プラグ(モノ標準プラグのケーブルをRCA端子の機器に接続したいときに使用する)、RCAメス-モノ標準オス変換プラグ(RCAプラグのケーブルを標準プラグ端子の機器に接続したいときに使用する)なぞがあります。

6:音声出力用スピーカー
 一発録りは効果音との絶妙なタイミングが命!だから録音時の音声モニターは欠かせません。このために使用するスピーカーは、ポータブル機器に接続するような簡易スピーカーでも構いません。要は効果音が聞こえればいいのです。ただし、あまりにも大きい音でスピーカーから出力してしまいますと、ハウリング(スピーカーから出た音がマイクで拾われまたスピーカーから出て来るという永久運動を繰り返してノイズを発生する)を起こしてしまいますので注意して下さい。

 スピーカーなんかないし、買えないっという方はヘッドフォンをみんなで使用するというのも手です。ただしこの場合、必ずしも全員がヘッドフォンを使用できるかわからないという問題があります。分割するジャックを買ってきて複数つなげれば、多人数でヘッドフォンが使用できますが、その分出力される音声も小さくなってしまうので聞こえないという問題も起こりかねません。

 ちなみに、写真は、ソニーのポータブルCDなどに接続して使うポータブルスピーカー。乾電池で動くのでそこそこ使えます。ただし音質は昔のラジカセ程度。低音から高音までしっかりでるというわけにはいきません。1万円前後で購入できたと思います。

っと、これだけ用意すればほぼ完成です。ちなみに、写真はRBCホームページ用に制作したCMを録音する際にセッティングしたものです。CMの録音は一発録りで行いましたので、用意したモノは録音用DAT(一番手前)、ミキサー(その次のモノ)、ポータブルMDを2台(見えるかな?)、スピーカー(6の写真と同一のモノ)、マイク(写真には写っていません)でした。

1/2

次のページへ


でも、これらを接続しなくてはいけませんね。それは「セッティング編」でご説明いたしませう。

つづく

戻る


(C)Regained Broadcasting Club